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新たな競争時代に入る鉄鋼メーカー/ 日本製鉄が中長期経営計画発表

日本製鉄株式会社が2021年度から2025年度までの中長期経営計画を発表しました。そこには日本の鉄鋼産業が直面する課題と方向性が凝縮されています。

それは「グローバル市場における競争力強化」と「脱炭素社会に向けた技術革新競争」に大きく分けられます。


前者は「縮小する国内市場」と「拡大するアジア市場」という世界の鉄鋼市場の中で、日本企業が技術力の高さを活かせる高級鋼材分野での競争力向上を中心に、世界シェアの過半を占める中国企業などとどう戦っていくかがテーマとなります。
※4月に入って中国の鉄鋼4位の「鞍鋼集団」と9位の「本鋼材集団」が経営統合を決めたという報道がありました。統合すると中国で2位、世界でも3位の鉄鋼メーカーの誕生となります

ここでは、生産拠点の集約化や要員削減を含む合理化と設備の最新鋭化、それにデジタル・トランスフォーメーションの進展によって生産効率の向上を図ることが一つ目の対策となります。

日本製鉄の中長期経営計画における国内生産体制の集約化(高炉を14基から10基へ削減)や、協力会社(作業請負)を合せて 20%を上回る要員合理化はこうした対策として位置づけられます。

一方、高級鋼材分野は従来からの主要製品である自動車用鋼板などに加え、世界的な脱炭素化の進展による変圧器の効率化規制や自動車のEV化に伴って、電磁鋼板の市場が急激に拡大していきます。生産拠点の集中化と設備の最新鋭化によって、こうした高級鋼材分野で日本企業の競争力をさらに高めるのが二つ目の対策です。

さらに、アジアの成長市場で現地での一貫生産体制を強化し、市場ニーズに合った製品を低コストで提供できる体制をつくり上げるのが三つ目の対策です。

こうした「グローバル市場における競争力強化」は、従来から存在する課題と対策ですが、そこに新たに加わったのが「脱炭素社会に向けた技術革新競争」です。

鉄鋼メーカーの中でも日本製鉄のような「高炉メーカー」は、鉄鉱石から鉄を作り出す過程で大量の二酸化炭素を排出します。世界的な脱炭素社会への急激な流れによって、鉄鋼業界もカーボンニュートラルの実現は不可欠となりました。

カーボンニュートラルに向けた基本的な対策としては「⾼炉⽔素還元」「⼤型電炉での⾼級鋼製造」「100%水素による直接還元鉄製造」が挙げられます。

⾼炉⽔素還元の実現には、原料炭による鉄鉱石の還元を一部水素に置き換える技術が必要です。

⼤型電炉での⾼級鋼製造には、鉄スクラップを電気で溶かして鉄をつくる「電炉」の製鉄技術を高め、現状では高炉でしか作れない高級鋼材を作る技術が必要です。

そして100%水素による直接還元鉄製造には、これまでとは全く異なる前人未到の技術が必要となります。

これらの技術開発には巨額の資金が必要になる上、カーボンフリー水素やカーボンフリー電力など、鉄鋼業界以外での技術革新や生産体制の整備も必要となるため、官民挙げて全産業横断的な取り組みが不可欠です。

鉄鋼業界のグローバル競争における勝負は、もはや個別企業の経営努力を越えた国家間の競争という段階に至っているということができます。
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