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トヨタが水素エンジン車を開発/ 自動車業界のもうひとつの脱炭素化

トヨタ自動車は、ガソリンの代わりに水素を燃焼させて走る「水素エンジン」の開発に本格的に取り組むことを発表しました。先ずは5月に行われる24時間耐久レースに水素エンジン車で参戦すると言います。※(追記)

一方、同社の豊田章男社長は自らが会長を務める日本自動車工業会の記者会見で「日本の強みを生かしたカーボンニュートラル」の必要性を訴えました。

その趣旨は、ガソリン車やディーゼル車をいきなり禁止するのではなく、日本の自動車産業が持つ高効率エンジンとモーターの複合技術に「カーボンニュートラル燃料」を組み合わせることで大幅なCO2削減を推進していこうという提言です。

トヨタ自動車が今回発表した水素エンジンの開発も、そうした流れの一貫のようにも見えます。


世界的に巻き起こっているEVを中心としたゼロエミッションカー(ZEV)による脱炭素化は、一定の時期以降に発売される「新車」をZEVに限定することでCO2の削減を進めていくものです。

しかし、日本だけでも既に7,800万台が保有されており、保有期間も長期化しているため新たに販売される年間500万台の新車を全てZEVにしても、国内の車が全てZEVに入れ替わるまでに15年間かかるという試算もあります。

すなわち、新車を規制するだけでは自動車の脱炭素化は不十分で、既に保有されている自動車の低炭素化を併せて進めていくことが重要であり、それにはCO2の排出を大幅に削減できる「カーボンニュートラル燃料」の活用が効果的だという主張です。

こうした主張の背景には、日本の自動車産業は完成品メーカーと部品メーカーが一体となった開発・生産体制に強みがあり、急激なEV化によって多くの部品メーカーが深刻な打撃を受ければ日本の自動車産業全体の競争力が低下するという強い危機感がうかがえます。

そして、従来の「エンジンで動く自動車」という基本構造を維持しつつ「燃料による低炭素化」を進めていけば、日本の自動車産業全体がZEVへの対応を整えていくための時間を生み出せるという意図も感じられます。

ただ、GMがいち早く全面的にEV化にシフトして自動車業界での復権を狙っているように、脱炭素化を機に自動車産業の勢力図を一気に変えてしまおうと考えている自動車メーカーも多く、日本の自動車業界だけが世界的に急激に進むEV化に抗することは困難だと考えられます。

アップルやホンハイ精密工業のEV参入が取りざたされているように、自動車のEV化は自動車産業をスマホ型の水平分業構造に変えてしまう可能性があり、そのことは日本の自動車産業が長年かけて築き上げてきた強みを一気に失ってしまうリスクをはらんでいます。

ただ、そうかといってこれまでの強みを維持するためにエンジン車にこだわることで新たな産業構造への転換が遅れてしまうのも深刻なリスクを招きます。

そうした中で、ホンダが2040年までに世界で販売する全ての新車をEVとFCVにする目標を打ち出すなど、痛みを覚悟で一気にZEV化へとシフトする国内メーカーも現れてきました。

日本型自動車産業モデルを先頭に立って築いてきた業界の盟主であるトヨタ自動車はどうするか、日本の自動車産業は重大な岐路に立たされていると言えます。

※(追記)カローラスポーツを改造した水素エンジン車は、5/22~23に富士スピードウェイで行われた「富士SUPER TEC 24時間レース」に参加し、完走を果たしました。

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