EV時代の自動車産業の業界構造と国内自動車産業の競争力(1)
アップルのEV参入が報道されて以来、EVにより自動車業界はスマホ産業のような水平分業型になると言われています。
日本でも昨年6月に設立されたばかりのEVスタートアップであるASF株式会社が、佐川急便の配送用軽EV(7200台)をスマホ型の水平分業体制で開発すると発表されました。ASFが設計し、製造は格安小型EVの開発で話題になった中国の五菱汽車に委託するとのことです。
いよいよ日本でも始まった新しい形でのEV開発ですが、これからのEV時代に自動車産業の業界構造はどのように変わっていくのか、そしてその中で国内自動車産業の競争力はどうなっていくのか、2回にわたって考えてみます。
先ずは自動車産業の変革後の姿と言われているスマホ産業の業界構造を見てみましょう。

スマホ産業は大きく分けると次のようなプレイヤーで構成されています。
1.プラットフォーマー
典型的なのはgoogleで、自社開発したOSをスマホメーカーに無料で提供し、OS上で動くアプリの有償提供やアプリ開発企業からのロイヤリティ、広告などで稼ぐビジネスモデルです。研究開発投資の嵩むOSを無料提供することでスマホ開発企業の新規参入を促し、スマホ市場で自社OSのシェアを高めて収益の基盤を広げることをねらいます。
2.スマホ端末開発メーカー
プラットフォーム(OS)上で、ユーザーニーズに適したスマホを設計し、製造は外部の生産受託企業に委託して完成品を売るスマホ端末メーカーです。中国のOPPOやシャオミなどが該当します。
3.総合開発型スマホメーカー
OSからスマホ端末まで全て自社開発するスマホメーカーで、製造だけは外部の生産受託企業に委託するビジネスモデルです。アップルがこれに該当します。
4.生産受託メーカー
スマホ端末メーカーから生産を請け負って委託元メーカーのブランド名で完成品を製造するビジネスモデルです。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が代表格です。
5.部品メーカー
ファーウェイ社のスマホを例にした調査では、1台あたりの部品点数は1,600点を超えているとのことです。ちなみにその内で日本製の部品は800点を超えて半数以上に上ります。スマホ産業はこうした部品を供給する多くのサプライヤーで成り立っています。
6.アプリ開発者
OS上で動くアプリを開発する企業や個人です。2020年の1年間でiOSとアンドロイドOSの両方合わせたアプリのダウンロード件数は1億4000万DLを超え、iOS上のアプリストアであるApp Storeの売上は7兆円を上回り、Google Playも4兆円を超えたという調査結果があります。
現状の自動車産業は、巨大な自動車メーカーが部品メーカー企業群を従え、開発・設計から完成車の組み立てまでを自ら行う「垂直統合モデル」で成り立っています。
そうしたビジネスモデルが、トヨタの「かんばん方式」や部品メーカーを巻き込んだコスト削減など、日本の自動車産業の競争力を支えてきたと言えます。
EV化によってスマホ産業化すると言われている自動車業界は、どのような構造になっていき、日本の自動車産業はどのように競争力を維持していくのか、次回はそういった点を考えてみましょう。
――――― 業界研究ニュース ―――――
大学1年生・2年生からの就活準備サイト
就活 WINavi(ウイナビ)
日本でも昨年6月に設立されたばかりのEVスタートアップであるASF株式会社が、佐川急便の配送用軽EV(7200台)をスマホ型の水平分業体制で開発すると発表されました。ASFが設計し、製造は格安小型EVの開発で話題になった中国の五菱汽車に委託するとのことです。
いよいよ日本でも始まった新しい形でのEV開発ですが、これからのEV時代に自動車産業の業界構造はどのように変わっていくのか、そしてその中で国内自動車産業の競争力はどうなっていくのか、2回にわたって考えてみます。
先ずは自動車産業の変革後の姿と言われているスマホ産業の業界構造を見てみましょう。

スマホ産業の業界構造
スマホ産業は大きく分けると次のようなプレイヤーで構成されています。
1.プラットフォーマー
典型的なのはgoogleで、自社開発したOSをスマホメーカーに無料で提供し、OS上で動くアプリの有償提供やアプリ開発企業からのロイヤリティ、広告などで稼ぐビジネスモデルです。研究開発投資の嵩むOSを無料提供することでスマホ開発企業の新規参入を促し、スマホ市場で自社OSのシェアを高めて収益の基盤を広げることをねらいます。
2.スマホ端末開発メーカー
プラットフォーム(OS)上で、ユーザーニーズに適したスマホを設計し、製造は外部の生産受託企業に委託して完成品を売るスマホ端末メーカーです。中国のOPPOやシャオミなどが該当します。
3.総合開発型スマホメーカー
OSからスマホ端末まで全て自社開発するスマホメーカーで、製造だけは外部の生産受託企業に委託するビジネスモデルです。アップルがこれに該当します。
4.生産受託メーカー
スマホ端末メーカーから生産を請け負って委託元メーカーのブランド名で完成品を製造するビジネスモデルです。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が代表格です。
5.部品メーカー
ファーウェイ社のスマホを例にした調査では、1台あたりの部品点数は1,600点を超えているとのことです。ちなみにその内で日本製の部品は800点を超えて半数以上に上ります。スマホ産業はこうした部品を供給する多くのサプライヤーで成り立っています。
6.アプリ開発者
OS上で動くアプリを開発する企業や個人です。2020年の1年間でiOSとアンドロイドOSの両方合わせたアプリのダウンロード件数は1億4000万DLを超え、iOS上のアプリストアであるApp Storeの売上は7兆円を上回り、Google Playも4兆円を超えたという調査結果があります。
現状の自動車産業は、巨大な自動車メーカーが部品メーカー企業群を従え、開発・設計から完成車の組み立てまでを自ら行う「垂直統合モデル」で成り立っています。
そうしたビジネスモデルが、トヨタの「かんばん方式」や部品メーカーを巻き込んだコスト削減など、日本の自動車産業の競争力を支えてきたと言えます。
EV化によってスマホ産業化すると言われている自動車業界は、どのような構造になっていき、日本の自動車産業はどのように競争力を維持していくのか、次回はそういった点を考えてみましょう。
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