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EV時代の自動車産業の業界構造と国内自動車産業の競争力(2)

前回はスマホ産業の業界構造を見ましたが、EV化した自動車産業をそれに重ねながら国内企業の競争力を予想してみましょう。
 

EV時代の業界構造と国内企業の競争力


1.プラットフォーマー(ソフトウェア)
EV時代のソフトウェア面でのプラットフォームとしては自動運転用OSが挙げられます。自動運転は最も競争の激しい分野であり、アルファベット(Google)傘下のウェイモをはじめとするIT企業や既存の大手自動車メーカーが入り乱れて開発競争を繰り広げています。そうした中でGoogleのアンドロイドのようにオープンソースの自動運転OS「Autoware(オートウェア)」でプラットフォーマーの座を目指しているのが日本の自動運転スタートアップである株式会社ティアフォーです。

同社は国際業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」を設立し、「Autoware」の業界標準化に取り組んでいます。既にハードウェアのプラットフォーマーを目指す鴻海精密工業とも提携し、独自の自動運転システム開発に取り組んできたトヨタ自動車もMaaS専用次世代EV「 e-Palette(イーパレット)」にAutowareを採用するなど、着々と実績を積み上げているその姿からは世界を相手に十分戦える可能性が感じられます。


2. プラットフォーマー(ハードウェア)
自動車には高い安全性が求められるため各国当局の認可を受けるには衝突安全試験なども必要で、EVを車体の基本構造(プラットフォーム)から開発すると莫大なコストがかかってしまいます。そのためプラットフォームを提供する「ハードウェアのプラットフォーマー」の存在はEV開発への新規参入を容易にします。

こうしたハードウェアのプラットフォーマーとして最も注目を集めているのが、スマホと同様にEVでも受託生産に乗り出している鴻海精密工業です。無償でプラットフォームを提供することで生産受託につなげるビジネスモデルです。

一方、モーターを中心としたEVの基幹部品の有力サプライヤーである日本電産も、ゆくゆくは車体に基幹部品一式をセットにしたEVプラットフォームをメーカーにまとめて納入するビジネスを構想しているようです。

EVの基幹部品メーカーからプラットフォーマーへと事業領域を広げるこの構想は、世界一の総合モーターメーカである日本電産が中心になれば実現可能性は十分あると考えられます。

3.EV開発メーカー
ハード・ソフトのプラットフォームを活用しながら、ユーザーニーズに適したEVを開発・設計し、外部の生産受託会社で製造した自社ブランドのEVを販売するのがEV開発メーカーです。

日本では佐川急便の配送用軽EVを開発するASF株式会社のような、EVスタートアップが該当すると考えられますが、今後どれだけ競争力のある国内メーカーが誕生するかは全く未知数です。

4.総合開発型自動車メーカー
自動運転OSやプラットフォームを自社グループやアライアンス先のグループ内で開発し、それらを活用しながら自社ブランドのEVも開発する自己完結型のメーカーです。既存の大手自動車メーカーのEV化で想定されるビジネスモデルです。完成車の製造までを自社グループで行えば、既存のガソリンエンジン車と同様の「垂直統合モデル」となり、製造を外部委託すればスマホ産業のアップルのような「水平分業型」となります。

垂直統合モデルは、基幹技術の優位性と系列化した部品メーカーとの緊密な連携によって高品質とコストダウンを実現し、競争力を発揮してきました。

しかし、EVは構造も部品点数も簡素化されて品質で差をつけにくくなると言われており、生産受託が普及すれば販売車数の少ないメーカーでも低コストの恩恵を受けられるようになります。また基幹技術は自動運転などに変わり、既存の大手自動車メーカーの技術的優位性も薄れることで、EV時代は従来のように大手自動車メーカーによる垂直統合モデルは競争力を発揮しにくくなります。

トヨタ自動車を筆頭に、国内大手自動車メーカーは従来の垂直統合モデルでの成功体験が強いだけに、いかに成功体験に囚われずに新たなビジネスモデルを再構築できるかという点が、国内大手自動車メーカーの競争力を左右するものと考えられます。

5. 生産受託メーカー
EV開発メーカーから生産を請け負って、委託元メーカーのブランド名で完成品を製造するビジネスモデルです。ソニー製EVの試作も手掛けたオーストリアのマグナ・シュタイヤーなどがありますが、スマホ産業で代表的生産受託メーカーである鴻海精密工業は、EVでも生産受託に進出しており、既に1300社を超える部品メーカーがアライアンスに手を挙げていると言われています。

日本では、既存の完成車メーカーの中で「EVの総合開発型メーカー」になるのを断念し、生産受託メーカーへと業態転換を図る企業が出てくる可能性も指摘されています。その場合も総合開発型メーカーと同様に、これまでの成功体験から脱却できるかどうかが生産受託メーカーとしての成否を分けると考えられます。

6.部品メーカー
EVは心臓部も含めてガソリンエンジン車とは部品の構成も部品点数も大きく異なるため、部品業界は顔ぶれも一変することになります。ただ、日本には自動車業界だけでなく電子機器業界などでもグローバルで高いシェアを誇る部品メーカーも多く、日本のメーカーは「部品産業」に強いとも言えますので、新たなEV部品分野でも競争力を発揮する企業が多く出てくる可能性は十分あると考えられます。

7.アプリ開発者
スマホのようなエンタメ系のアプリだけでなく、自動運転に関するものや安全性を高めるものなど、より技術的に高度で重要な機能を持つソフトも含めて様々なソフトウェアが開発されていくと考えられます。またそれらの多くは5G・6Gの通信環境下でクラウドサービスとして提供されるでしょう。

この分野もEV開発と同様に、ユーザーニーズを的確に把握して商品開発ができるかが勝負であり、日本企業が競争力を発揮できるか否かはやはり未知数と言えます。

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